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更新日2011/04/29 |
こちらのページは『PROJECT.F.A.』からの2001/01/20掲載のものを改訂しました。 |
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〜天使が翼をなくすとき、人は生きている喜びを知る〜 |
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おもな登場人物 |
ラビエル(プレイヤーの女天使) |
天界の天使育成機関を卒業したばかりの新米天使。
大天使ガブリエルから地上界<インフォス>の守護を命じられたが、地上界に直接関与出来ないため、勇者を捜している。 |
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グリフィン(ラビエルにスカウトされた男勇者) |
盗賊団・ベイオウルフの頭目。
曲がったことが大嫌いで、仲間からの信頼が厚い。
幼い頃死に別れた妹・リディアのことを、ずっと思い悩んでいる。 |
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登場人物の情報はこちらにも載せてます。
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概要 |
少し天然な所がある新米天使・ラビエル。
天使の仕事を手伝ってくれる勇者を捜していると、見つかったのは盗賊グリフィン。
さっそくラビエルはグリフィンをスカウトしに行く…。
生きる為に盗賊になったグリフィン。ゲームイベントを元にしています。 |
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目次 |
1 運命を変えた出会い〜天使ラビエル〜 |
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 |
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〜天使が翼をなくすとき、人は生きている喜びを知る〜 |
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1 運命を変えた出会い〜天使ラビエル〜 |
こんなに大切な存在になるなんて、思ってもいなかったのに…。
「は…、はじめまして、グリフィン」
「ん!?」
俺はその時、いつもの通り金持ちの家に盗みに入り、屋敷の二階から飛び降りようとしていた。
今まさに飛び降りようとしている俺に向かって、そいつは声をかけてきた。
「私は天使、ラビエルと申します。あなたにお願いがあってきました。」
いきなりの事で驚いた俺は、何も反応が出来ず、しばらく時が流れた。
そいつは
「あの〜〜」
「聞こえてますか?」
を繰り返していた。
やがて……かすかな物音で我に返った。
家人が物音を立てたようだった。
急いでここを離れなくては。
ひとまず、いつもの俺に戻らなくては。
ここで家人に見つかって捕まるわけにはいかない。
俺はいつも通り、近くの自分のアジトへと向かった。
「あ、待って〜〜」
どうやら俺の後を付いて来るようだった。
『走る』のではなく、そいつは『飛んで』いた。
アジトに着いた俺の後ろに、そいつは浮かんでいた。
最初にその姿を見たとき、幻だと思った。
澄んだコバルトブルーの瞳は慈愛に満ち、流れるような亜麻色の髪が腰まで伸びている。
肌は白くきめ細かで果物のようにみずみずしい。その背には、純白の翼。
−−−天使−−−−
まさにその言葉がふさわしい女。その瞳に俺を映して、その女は驚くべき事を口にした。
「お願いです、グリフィン。私の…、私の……」
−−−勇者になって下さい−−−−
天使ラビエルと名乗ったこの女は、天使の役目と勇者の役目を話し始めた。
この地上界インフォスで起こっている異常事態。
その異常事態の解決の為、天界よりやってきたラビエル。
しかし、天使は地上界で力の行使ができない。
勇者として資質を持つ選ばれし人間の協力がなくては何も出来ないこと。
その『勇者として資質を持つ選ばれし人間』がグリフィンだったと。
「……」
勇者、天使、神……
あの時、どれ程の存在にすがり、祈ったのだろう?
<助けて>
どれ程すがっても、祈っても何も起こらなかった。
<妹を、両親を助けて!!>
『子供狩り』と称して、村を襲ってきた領主。
両親は俺たちをかばって殺され、一緒に村から逃げ出した妹とも、死に別れてしまった。
子供の俺が両親と妹の分までこの世界で生き抜くために、盗みを始めた。
−−そして、今は盗賊団ベイオウルフの頭となった。
自分の力しか信じられない。
祈りでは何も変わらない、変えられない。
唯一信じられるもの
『自分の力』
何にも頼らない。自分の力で
生きる、生きる、生きる!!
そんな俺を勇者にだと!!
冗談じゃない、何で俺が…。
「断る!!」
「!!」
俺の返事を聞いた天使は、びくっと体を震わせ、悲しげに俺を見つめてきた。
泣きそうな顔。
でも、涙を流すのを必死でこらえている。
『お兄ちゃん』
その姿はあの日のリディアを思い出させた。
両親の死に泣き出してしまいそうな俺とリディア。
それでも必死に逃げた。
両親の分まで生きるために。
『お兄ちゃん……』
「グリフィン……」
悲しみをこらえ、決意を秘めた天使の瞳。
妹の面影が天使に重なる。
(リディア…おまえは俺に勇者になれというのか?)
助けることが出来なかった、俺の妹。
何もできなかったリディアの代わりに、この女−ラビエルの願いを叶えてやりたい。
そんな気分になってしまった。
「グリフィン、どうしてもダメですか?」
「…わかった、引き受けてやるよ。」
天使の勇者…仕方ないやってみるか。
盗賊をやりながらでも出来るだろう。
この時の俺は『面倒くさいが、仕方がない仕事』という認識しかなく、簡単に考えていた。
これがあの忌まわしい過去の記憶、その真実を知る旅立ちになろうとは
このとき俺は、、少しも思いはしなかった。
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